女性シンガーソングライター特集!邦楽フィメールSSWの夜明け。
申し遅れましたが、私nuskには、2人の娘(5才/3才)がおります。
それはそれは、天使のような可愛さです。
そんな娘たちが近頃、幼稚園で覚えてきたであろう「チ●チン」とか「ウ●コ」とかいうお下品な単語を、毎夜連呼しては笑い転げてます。
それに対して、
「女の子はそんなことは言いません!」
「もっと女の子らしくしなさい!」
と叱りつける毎日。
そんな中、TVアニメ「HUGっと!プリキュア」にハッとさせられた出来事がありました。。
「女の子だってヒーローになれる」
「男の子だってお姫様になれる」
「女の子らしく」と当たり前のように発してた言葉を、少し考え直さないといけないなぁと思った今日この頃です。
今、女性シンガーソングライターがキテる。
さて、本題です。
そんな「女性らしさ」「女の子らしさ」という狭いカッコでくくれないような、個性的な女性SSW(シンガーソングライター)が、続々と頭角を現しています!
彼女たちは、「なんとなく成行きでバンドやってまーす」的な、凡百のバンドマンが100人束になっても敵わない、強い芯と、アーティストとしての表現力を持ち合わせています。
今日はその中でも一押しのアーティストを4人(組)に絞って紹介していきます!
CHAI
まずは女性4人組バンド「CHAI」です。脱毛サロン ミュゼプラチナムのCMにも起用されているので、ご存知の方も多いでしょう。
「もうすでにブレイクしてんじゃん!」との声もあるでしょうが、いえいえこんなもんじゃありません。
なんせ彼女たち「グラミー賞」狙ってますから。
最初は、
「ハイハイ、どうせチャットモンチーとSHISHAMOの系譜でしょ」
なんて思ってスルーしていましたが、よくよくみてみると…
いや待てよ、なんかおかしいぞ…
「ド●ス」しかいないじゃないか!!
そうです。チャットモンチーやSHISHAMOは、あくまで愛嬌のある「ちょい●ス」でした。
しかしCHAIのメンバーはもれなく、一人余さず、
混じり気なしの●スなのです。
やっと言えます。
シャグスの再来だー!!
ザ・シャグスは60'sアメリカンサイケを聴く上で必ずブチあたる「試金石」とも言えるバンドです。
およそ50年の時を超えてCHAIと通じあう、インパクトのあるビジュアルもさることながら、驚くべきはその演奏力です。
「ヘタウマ」なんて上品なものではありません。単なる「へたくそ」です。
この怪しいグルーヴを「サイケデリック」と呼べるかどうか、あなたの素質が試されます。
思わぬところでテンションが上がってしまい、コイツらきっと普通じゃないな、とYoutubeで音源を聴いてみました。
ガールズバンド御用達のギターロックでもテクノポップなく、CHAIのサウンドは、紛れもなく「ポストパンク」でした。
CHAI - N.E.O. [YouTube Music Sessions]
ポストパンクとは?
ポストパンクとは、1970年代後半パンクロック終焉の後、パンクの精神を受け継ぎながらも、音楽的に多様化していったバンド群の総称です。
「ポスト」パンク=パンクの後釜、ということですね。
音楽性は様々ですが、従来のロックバンドに比べて、クールで簡素なサウンドを目指しました。
Joy Division - Transmission [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
やけに高い音を奏でるベースと、高速で刻まれるハイハット。
当時のリスナーからすると、一昔前の「オールドロック」を遥か銀河系の彼方へぶっ飛ばすほど、革新的でクールだったのではないでしょうか。
Young Marble Giants- Wurlitzer Jukebox
隙間だらけの音作り。ドラムス不在。やる気のないボーカル。
ブルースに根差した旧来のロックとは一線を画した自由なサウンドは「ニューウェーブ」とも呼ばれました。
ポストパンクの「クール」なサウンドを継承したCHAIというバンドは、「ちょい●ス」ではなく、「クール●ス」と呼ぶに相応しいのではないでしょうか?
そう、真夏のサラリーマンの必須事項ですね(それはクールビズ!)
柴田聡子
なんやコイツ!今度はド直球の「ちょい●ス」やんけ!
スミマセン、もうやめておきます。
女の子の親として、ものすごく恥ずかしくなってきました。。
音楽的には、ゴリゴリの極上シティポップです。
「ゴリゴリのシティポップ」というと、「白いブラックサンダー」みたいなおかしな感じがしますが、気にしないでください。
バンドサウンドの都会的なアレンジも、スパイスを効かせつつ綺麗にまとまっていて、軽やかなボーカルと見事に調和しています。
フーセンの空気が抜けて飛んでいくような歌い方がとてもキュートです。
荒井由実の「中央フリーウェイ」を思い起こさせます。
シティポップという河川があるとすれば、この曲と、この時代のユーミンは、その最上流に位置すると個人的に思っています。これほど澄み切ったメロディーとサウンドがあるだろうか。
iri
お次は嗜好を変えて、R&B系のSSW。
spotifyのオススメに出てきましたが、そのハスキーなボーカルが醸し出すLAZYな雰囲気に一発でやられてしまいました。
若干24歳で、完全に堂に入ってます。
ボーカリストのしてのオーラがハンパないです。
経歴を調べてみると、JAZZバンドでボーカルを務めていたとのこと。道理で。
日本では珍しく、楽曲ごとにプロデューサーを変えるというU.S.Aなスタイルでアルバムを制作しています。
コラボしている制作陣には、5lackやケンモチヒデフミ(from水曜日のカンパネラ)などのビッグネームも。
スモーキーでジェンダーレスなボーカルスタイルは、JAZZシンガーのカサンドラ・ウィルソンを彷彿させます。
Cassandra Wilson - Blue Light 'Til Dawn
男性?いや女性?あれやっぱり… 歌声が渋すぎて、最初ラジオではじめて聴いたときは、本当に男女の区別がつきませんでした。
しかし、闇夜から忍び寄る蛇のような、湿度の高い歌声に、一瞬で虜になりました。
忍び寄るスライドギターと、音の隙間を生かした大人なアレンジも見事。
吉澤嘉代子
今回紹介したアーティストの中では、ボーカリストとしての表現力がダントツでNo. 1です。
吉澤さん、「からだの奥に残ってる」はマズくないですか?
クリープハイプばりの「内角攻め」の歌詞は置いといて…
この人は何より歌が凄いんです。
なんというか、歌声にエグみがあって、声色にいくつもバリエーションがあって、その切替えがものすごく上手です。
にもかかわらず、ごく自然に流れるようなフレーズを歌います。
うまく伝わっていないと思いますが、こんな時に便利な言葉があります。
つまり「天才」ということです笑
以前紹介した崎山蒼志くんにも通じる要素かもしれません。
エグみのある歌声と流麗さの同居は、椎名林檎(昔に比べて格段に歌唱力あがってますよね)や、イギリスのSSWジョニ・ミッチェルを思わせます。
All I Want - Joni Mitchell (original)
生活感のある、少々キワドイ歌詞世界と、情感のこもった歌い方は、先程も言及した通り、クリープハイプにも似ていますね。
以上、女性SSW特集でした!
今回紹介したどのアーティストも、「女性」であることを武器にせず、かつ「女性」であることと常に向き合いながら、立派なひとり(1組)の音楽家として、自らのキャリアを着実に進めていますね。
1年先には、いずれのアーティストも間違いなくブレイクしてるはず。
彼女たちのDay Break(夜明け)は近い!!
…さて、これから娘の教育方針会議をはじめたいと思います。。
では。
- アーティスト: iri
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2018/02/28
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
酷暑には音楽を。暑い時に聴きたい洋楽オールジャンルBEST5
暑い日が続いています。
最高気温は各地で自己ベスト更新しまくってますね。
どうなるのでしょうか日本列島。
今日仕事から帰ると、5歳の娘が「アナ雪」のDVDをみていました。
あ、そういう涼の取り方も理解してるんだと妙に感心してしまいました笑
さて、そんな5歳の娘からインスピレーションを頂きまして今回は、酷暑の日に聴く(効く)音楽というテーマで記事を作ってみました!
①シティポップ
まずは「夏」が代名詞ともいえる、日本独自の音楽ジャンル「シティポップ」です。
近年では「ネオ・シティポップ」として大人気のSuchmosやYogee New Wavesはもちろん、韓国にまでリバイバルが飛び火して、こんなグループも出てきてます。
se so neon(セソニョン)というバンドです。
まだまだ若いのに、異常にオーラというか貫禄があります。
蒸し暑い夜に効きますね。チルアウトチルアウト。
しかし私が強くオススメしたいのが、シティポップ第一世代の山下達郎です!
まずはイントロのベース!
今でも充分通用するであろうメロウなファンキーサウンドと、力強くも涼やかなボーカルの組み合わせは絶品です。
海外ではレア・グルーヴ(ジャンル問わず、マイナーだけど踊れるレコードの総称)の名盤になってるそうです。
達郎さん。もう一回だけでいいんで、このファンキー路線でアルバム作ってください(懇願)
②インディ・ポップ
今ではある意味「王道」かもしれませんが、その辺のお洒落な兄ちゃんが作ったさりげなさ、力の抜き加減、"アンチ"ロックな姿勢がCOOLです。
Vampire Weekend - 'Oxford Comma'
雲ひとつないかのような明快なバンドサウンドに、花を添える軽妙なシンセとストリングス… あぁ、これぞ青春。
…ん?なに?
え、これもう10年前(絶望)
③ボサノヴァ
ブラジルという年中蒸し暑い国には、「サンバ」という、実に暑苦しい伝統音楽があります。
「今更だけど、暑苦しすぎてこりゃかなわん」ということで、今から60年ほど前に誕生したのが、ボサノヴァ(英語でニューウェーブみたいな意味)です。
巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンの繊細なギターと囁くような歌声は、サンバの真逆をいってますが、複雑なリズムはサンバを継承しています。
[1] Antonio Carlos Jobim - The Girl From Ipanema
超有名な「イパネマの娘」。
ジョビン本人の弾き語りもいいですが、涼やかなオルガンの音色とボッサのリズムに身を任せて、「音楽浴」してみませんか?
Walter Wanderley- The Girl From lpanema
ボッサオルガニストの第一人者(一人しか知りませんが笑)ワルター・ワンダレイ。電子オルガンの無表情な音が、ボサノヴァに合うんです。
「あら、空調ガンガンに効いたスーパーのBGMみたい」と思われるしれませんが…奥さん、よくきいてください。
彼のオルガンプレイは意外とアツいんですよ!
④レゲエ
間違っても、アップテンポのダンスホールレゲエや、汗くさいジャパレゲをかけてはいけません。
そう、レゲエといえば、有無を言わさずボブ・マーリーです。
かのエリック・クラプトンに見出されたボブ・マーリーは、自国の音楽を、より洗練された形で全世界にアピールしました。
レゲエの一般的なイメージを一度捨てて、クールで奥行感のあるバンドサウンドをご賞味下さいませ。
この曲は本当にメロディーとコード進行が素敵なんですが、もっと注目してほしいのが、リズム隊の動きです。
レゲエにおけるベースやドラムスの独特の「間のとり方」は、日本の「詫び寂び」にも通じるように思います。明らかにロックにはない魅力です!
⑤ポスト・ハードコア
ワクチン療法ではないですが、暑いんならとことん暑苦しいやつもってこい!というドMな方には、「ポスト・ハードコア」を。
ポスト・ハードコアとは、ハードコアパンクを基調に、転調や変拍子などプログレッシブ・ロックの要素を盛り込んだ、こってりマシマシ系音楽ジャンルです。
つまりロック界の「家系ラーメン」といったところです。
イマの邦楽ロックでいうと、「なんちゃらラスベガス」こと、Fear,and ろッ… なんちゃらラスベガス。
ごった煮闇鍋サウンドは、ポストハードコアの影響大。
Fear, and Loathing in Las Vegas / Return to Zero
何この人たちコワい!
あームリムリ、暑苦しい!
近寄りたくない!!
…あ、やばい。
クセになってきました(再生4回目)。
いかがでしたでしょうか?
少しでも皆さんの体感温度を緩和できればと願いつつ、暑中見舞いに代えさせていただきます。
明日からまた暑い日が続きますが、お体には十分気をつけください。
- アーティスト: 山下達郎,吉田美奈子
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2002/02/14
- メディア: CD
- 購入: 3人 クリック: 54回
- この商品を含むブログ (89件) を見る
- アーティスト: Vampire Weekend
- 出版社/メーカー: Xl Recordings
- 発売日: 2008/02/05
- メディア: CD
- 購入: 4人 クリック: 53回
- この商品を含むブログ (92件) を見る
- アーティスト: ワルター・ワンダレイ,マルコス・ヴァーリ,パウロ・セルジオ・ヴァーリ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2017/07/12
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
RELATIONSHIP OF COMMAND (リレイションシップ・オブ・コマンド: +bonus disc)
- アーティスト: AT THE DRIVE-IN (アット・ザ・ドライヴ-イン)
- 出版社/メーカー: Daymare Recordings
- 発売日: 2013/04/24
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
【追悼・丸山晴茂】「ロックバンド」としてのサニーデイ・サービスを担った男
先日、いつものように目的もなくネットを徘徊していると、あるニュースが目に飛び込んできました。
それは、サニーデイ・サービスのドラマー、
サニーデイ・サービスはここ最近リリースペースが異様に早く、
サニーデイ・サービスに欠かせない存在
訃報を知ったとき、脳裏に浮かんだのは、
もっと具体的に言うと、「baby blue」の冒頭アコギパートからバンドサウンドに移行する際の、「寝ぼけまなこ」のフィルインと、「埃っぽい」
亡くなった人の顔に泥を塗るような言い回しで申し訳ないのですが
それぐらい、彼のプレイには特別感がありました。
私は、丸山晴茂のドラムがなければ、「ロックバンド」としてのサニーデイ・
ご存知の通り、2016年のアルバム「DANCE TO YOU」では、丸山氏はほとんど参加していないのですが、
実際に叩いてなくても、いつも晴茂くんがいてバンドを動かしてるような感じがする。どこかで見えない力が働いてる。自分でドラム叩いてても、晴茂くんだったらこう叩くんだろうなって思いながらやってる
曽我部のこの感情には、なんとなく共感できるものがあります。
インタビューにあるように、「桜super love」の歌詞に出てくる
「きみがいないことは きみがいることだなぁ」
という印象的なフレーズが、まさしくこの心情をうまく言い表しています。
つまり、「不在」=「喪失」ではなく、「不在」であることがそのものの「存在感」を際立たせる、ということを、曽我部は悟ったのです。
そしてこのエピソードは、ビートルズの「リンゴ・スター不在事件」を思い起こさせます。
アルバムレコーディング期間中に、ドラマーのリンゴ・スターが、ビートルズ脱退を宣言しました(結局すぐ戻るのですが)。
スケジュールの関係上、リンゴ不在のまま、ポール・マッカートニーが、かわりにドラムスティックを握り、レコーディングを続行したという名エピソードです。
私は、リンゴ・スターをロック・ポップス界最高のドラマーだと確信しています。
しかし、この「Dear Prudence」におけるポールは、リンゴのドラミングを完璧にシミュレートしていると思います。
このリンゴとポールの関係性と同じように、常に一緒にいたこと、プレイを間近にみていたことで、曽我部は、丸山晴茂の「フィーリング」が染みついていたのではないでしょうか。
そして、丸山の「フィーリング」こそが、「サニーデイ・サービス」というロックバンドの必要条件なのではないかと思っています。
丸山晴茂はサニーデイ・サービスというバンドの中に、今も息づいています。
そしてバンドは、丸山晴茂に支えられながら、これからもずっと、続いてくことでしょう。
ご冥福をお祈りいたします。
【楽曲解説】崎山蒼志、初スタジオ音源 本日解禁!!
前回緊急特集しましたが、
崎山くんは今、邦楽ロック界、
崎山蒼志の「スゴさ」「得体の知れなさ」
今回配信された楽曲は、「夏至」と「五月雨」の2曲です。
「夏至」
スロウなバラードも、彼の手にかかれば甘さゼロ、
このクソ暑い夏の日の一服の清涼剤になってくれること必至です。
「五月雨」に比べてコード感が薄く、空間的な音作りですが、
アコギのキメ細やかな爪引きが、10代の心を映し出すよう
「五月雨」
「samidare~五月雨~」として、
おそらくこれが決定版ということでしょう。
歌メロ、歌唱、歌詞、コード進行、豪快かつ繊細なギターカッティング・・・ どれをとっても一級品!
まとめ
この「夏至」「五月雨」をじっくり聴いてみて気づいたのは、アコギの音が少しザラついていて、金属的だということです。
あえてそういう音を目指してマスタリングされてるのかもしれません。
もしそうであれば、レコード会社さん、崎山くんの特性をよく理解されています。
「金属的」と表現しましたが、崎山くんの「右手」と「左手」が丁寧に繰り出す音の、「粒立ちの良さ」は、まったく損なわれていませんのでご安心ください。
是非とっておきのヘッドホンで聴いてみてください!
また、「五月雨」をB面にもってくるところも、
気が早いですが、次は物理的なマテリアルを欲してしまいます。。
間違いなく今後の邦楽界を揺るがすであろう崎山蒼志くんの、大きな一歩です。
皆さん是非ともフルで聴いてみてください!!
iTunes音源のダウンロードはこちら↓
崎山蒼志(15)の「得体の知れなさ」について、徹底的に分析してみた。
早耳の皆さんはすでにご存じのことでしょう。
邦楽界の超新星、天才シンガーソングライター崎山蒼志(さきやまそうし)。
今回は、最新のリリース情報を交えて、崎山蒼志くんの音楽性をアツく語り尽くしたいと思います。
成熟した邦楽シーン
さて突然ですが、近年の邦楽アーティストって、ほんとうに洗練されてきてますよね。
こなれたアレンジ、高い演奏技術、
優れたメロディーもやすやすと繰り出す「優等生」ばかりです。
星野源なんかはその代表格でしょう。
また、一昔前までは、洋楽リスナーから、日本のバンドは洋楽に比べて「グルーヴ感がない」「もっさりしてる」から聴けたモンじゃないとさんざん言われてました。。
今では「は?オマエSuchmos聴いたことないの?」で一発KOです。
Suchmos - STAY TUNE [Official Music Video]
巷にこれだけレベルの高い音楽が溢れているということは、音楽好きにとっては、紛れもないパラダイスなのですが、ひとつ心に満たされないものがあります。
それは、いうなれば「未知との遭遇」です。
ルーツのみえる音楽
宇宙人のつくる音楽、たしかに一度は聴いてみたいですよね。
とはいえ、人間には聴こえない周波数で作られてるのかもしれませんが。。
…なんて冗談はさておき、優等生バンドや良質な音楽だけでは満たされないのは、「未知との遭遇」つまり、「得体のしれない音楽」と出遭いたい!という欲求です。
世の中のほとんどの音楽は、既存のジャンルやアーティストの影響が垣間見える、つまり「ルーツのみえる」音楽です。
サカナクションを聴いて、「あ、この曲のアレンジはレディオヘッドを意識してるな」とか、
ゲスの極み乙女。のギタープレイは時々やけにYESのスティーヴ・ハウっぽいなとか、
アーティストの「ルーツがみえる」ことは音楽を聴く最大の楽しみのひとつなのですが、あえて意地悪な言い方をすると、「ルーツのみえる音楽」というのは「焼き直しの音楽」とも言えます。
「そんなこと言っちゃうと、世界中の音楽ぜんぶがそうなんじゃないの?」
たしかにそうなんです。
現代のあらゆる音楽は、既存の音楽やカルチャーに影響を受けています。
コード進行やメロディーは、クラシックの300年と、ポップミュージックの数十年の歴史の中で出し尽くされた、みたいなことはよく言われますが、
「え、音楽ってもう出尽くしちゃったの?」
なんて、少し寂しくなることがあります。
得体の知れない音楽に出会いたい!
現代の音楽シーンは、フルーツに例えると、いい具合に熟した良質な「ブランドもの」が出揃っていて、どれも間違いなく美味いんだけど、バナナもりんごもキウイフルーツも、どれも知ってる味なんだよなーという感じです。
そうなると、ドリアンやスターフルーツみたいな、果たして美味しいのか、どうやって皮をむくのか、そもそも食べられるのかすらもわからないけど、得体のしれないワクワク感の詰まったフルーツを切望してしまうわけです。
クドい前置きになってしまいましたが、その
「得体のしれないワクワク感の詰まったフルーツ」
が、まさに今回紹介する「崎山蒼志」くん、というわけです。
さて、だいぶハードルを上げてしまいました。
崎山蒼志(さきやまそうし)くんは、現在高校一年生で、静岡県在住のシンガーソングライターです。
バナナマン日村の出演するネット番組への登場で、突如SNSやネット上で話題になりました。
ご存じでない方、ウワサでは聞いてるけど…という方は、まず番組出演時の動画をご覧ください。(演奏は03:01~)
どうですか?すごいでしょう!?
得体が知れないでしょう!?
ある日、YouTubeのおすすめ動画に出てきたので、何気なしに視聴したのがキッカケで出会いました。
こういうTV番組って、子供なのにボーカルの声量がすごいとか、子供のわりにとてつもないギター速弾きができる、とか「子供のわりに」よくやってるね、というカッコ付きで賞賛されることが多いですが、、
すみません、ガチのやつでした。
一体何がスゴい?
何をもってガチなのかというと、「音楽」としての完成度の高さです。
「ギターこんなに速弾きできるよ」とか「こんなに早くツーバス踏めるよ」とかは、音楽ではなく、単なる曲芸です。
それを鍛錬して習得することと、芸として見栄えがすることは、尊敬に値しますが、それは音楽としての充実度、完成度とは無関係です。
対して、崎山蒼志くんのギターは確実に音楽性の充実につながるプレイをしています。
決して彼のギターは下手ではありません。
というか死ぬほどうまいです。
メロウだったり、パーカッシヴだったり、緩急自在で、音の粒立ちも良く、性急なのに抜群の安定感があります。
それでも彼はテクニックに走りません。
技術や本能に任せてギターを「暴れさせる」のではなく、音楽に追従させて「飼い慣らしている」ところに、彼の「音楽家」としての素質が垣間みえます。
早くも確立された歌唱法
ギタープレイも十分すごい崎山蒼志くんですが、歌の方も、とんでもなく素晴らしいです。
こちらもギターと同じくテクニック主義ではありませんが、驚くべきことは、すでに「崎山蒼志の歌唱法」が完全に確立されていることです。
まず、大抵のボーカリストはモノマネから入ります。
そこから自分の歌唱法を徐々に確立していきます。
レディオヘッドのトム・ヨークは、今でこそ唯一無二の歌唱法を持っており、真似するアーティストも多いですが、初期はU2のボノ風だったり、セックス・ピストルズのジョニー・ロットン風だったりしていました。
フジファブリックの故・志村正彦も初期は、覇気のないウルフルズのトータス松本みたいな歌い方をしていました。(01:42~のサビの歌い方)
そんな中、若干15歳で、誰にも似ていない、独自の歌唱法を身につけているっていうは本当にありえないです。
「う」とか「お」の発音が独特だったり、
あえて歌メロの流れを止めるような「堅い」発音をしたり、震えるような発声をはさんだり・・・
素人なのでうまく言語化できませんが、素人目でもその独特の歌唱法には耳を奪われます。
他にも風変りなコード進行、歌詞の言葉選びなど、ネット上ではさんざん話題になっていますが、ちょっと字数が多くなってきたので残念ながら割愛します。。
崎山蒼志くんのルーツ分析!
そんな優れた才能をもつ崎山蒼志くんを単独記事で紹介したいと思ったのは、やっぱり彼が「得体が知れない」音楽を奏でているからです。
幼い頃に母親の聴くヴィジュアル系ロックバンドの影響で音楽をはじめたそうですが、退廃的で耽美な歌詞世界はその辺からの影響を感じさせます。
Plastic Tree有村竜太朗の書く文学少年的な詩に少し似てるかもしれません。
鋭くも崩れそうな不安定な歌メロは、初期の七尾旅人や凛として時雨のTKなんかに似ているかも。
また、曲から溢れる思春期特有の焦燥感は、フジファブリックの「陽炎」もしくはNUMBER GIRLの「透明少女」を連想させます。
「日村がゆく」で話題になった「五月雨」という曲は特にですが、ギタープレイがとてもパーカッシヴです。
哀愁漂うコード進行と重なると、フラメンコギターの雰囲気があります。
ちなみに幼い頃はクラシックギターを習っていたんだとか。
やっぱり得体が知れない!
スミマセン、いろいろ並べ立ててみましたが、どれも似て非なるものだと思います。。
完敗です。
崎山くんの音楽が、既存のルーツミュージックの「焼き直し」ではない、突然変異的な音楽であるということはお判りいただけたかと思います!(負け惜しみ)
音源リリース!
実は、急ごしらえでこんな記事を作ったのには訳があります。
それは、あさって7月18日(水)に初のレコーディング音源「夏至/五月雨」がリリースされることが決まったからです!※
おめでとうございます!
※楽曲分析はこちら
「日村がゆく」でバズってから、たった2か月で音源リリース、更にはコヤブソニックなど、大型フェスへの出演も続々と決まっています。
近頃の市場スピードはほんと早いですね。
ポストフォークの起点となるか?
「フォークvsロック」の章でも述べましたが、フォークというジャンルの最大の魅力は、ソロ演奏ならではの、ゆらぎのあるリズムと、アーティストの人柄をそのまま音楽にしたような親密さにあります。
この利点を最大限に利用した崎山くんは、フォークミュージックの限界をブチ破りかねない存在だと思います。
崎山くんや、彼に触発された若者たちが、新世代のフォークミュージック、いわば「ポスト・フォーク」の潮流を創り出す日も近いかもしれません…!
星野源に次いで、日本の邦楽シーンを塗り替えてくれることを期待しています。
とはいえ、彼はまだ高校生になったばかりなので、学業や普通の高校生としての生活を第一にして、良い大人たちに見守られながら、今のところはマイペースで音楽活動を続けていただきたいです。
終始冷静さを欠いた解説で申し訳ありませんでしたが、私の、崎山蒼志くんへの愛と期待感だけは伝わったかと思います笑
以上、若き才能の紹介でした!
「音楽オタク」は社会において無価値。
音楽オタクの価値?
「音楽オタク」とは、三度の飯より(もしくは同じくらい)音楽のことが好きで、音楽をジャンル問わず楽しんでいる人たちです。
自分もそんな端くれに間借りしてる人間だと自認していますが、音楽オタクになると、果たしてどんないいコトがあるのでしょうか?
例えば・・・
◎周りの友人に一目置かれはじめる
◎急に女の子にモテはじめる
◎同じクラスのバンドマンにプロデュースをせがまれる
◎将来は、音楽に関わる仕事で飯を食っていける
なんてことは、残念ながら一切期待できません。
この世はコミュ力がすべて。(絶望)
モテたり、他人から一目置かれたり、良い就職先を見つけることは、少々乱暴な言い方ですが、コミュニケーション能力がすべてです。
残念ながら、音楽の知識という武器があっても、それを興味深いトークにできるかは皆さんのコミュ力次第です。
若い皆さんはすべからく、コミュ力を磨きましょう!!泣
それでも音楽を聴く理由
さて、コミュ力講座は、その道の優秀なブロガーさんにお任せするとして、音楽オタクになっても実生活ではまったくもって役に立たないことはわかっていただけたと思います。
役に立つというと、せいぜい古い洋楽ロック好きの上司に
「ツェッペリン?Tレックス?お前若いのにシブい趣味してんな~」 と可愛がってもらえる、ぐらいでしょうか。。
それなのに、私が皆さんにもっと幅広く音楽を聴いてほしいと願うのは、音楽を聴くことそれ自体の楽しみにあります。
音楽を聴く楽しみというのは、
「テンションがあがる」
「共感できる」
「リラックスできる」
など、それぞれ何とも替えがたいものです。
しかし、「音楽バカ」である皆さんには、より奥深い楽しみを知ってもらいたいのです。
音楽には、ロックやポップスだけでなく、ジャズ、クラシック、電子音楽など、数多くの音楽ジャンルがあり、それぞれのジャンルの中にも更に細分化されたカテゴリがあります。
なんと、音楽ジャンルの総数は現在1000以上にのぼるといわれています。
そして、それぞれの音楽ジャンルには、そのジャンルが形作られるまでの、興味深い「歴史」や「ストーリー」があります。
ざっと一例を挙げていきましょう。
・ヨーロッパの国々に、奴隷として連行された黒人たちの子孫は、先祖が労働の中で生み出した「ブルース」を、本来「クラシック」で用いられる西洋の楽器で演奏しはじめました。それをきっかけで誕生したのが「ジャズ」です。
・「ジャズ」は電子楽器の導入と、「ロック」や「R&B」等の時代の空気を貪欲に飲み込むことで、文字通り「フュージョン」となりました。
・「プログレッシヴ・ロック」の先駆者である「キング・クリムゾン」は、60年代ロックの最高峰であった「ビートルズ」をチャートから蹴落とし(諸説あり)、次世代のロックの狼煙をあげました。
・ロックの大革命である「パンクロック」の精神は、ブーム終焉後「ポストパンク」と「ハードコアパンク」に枝分かれして受け継がれました。
・そのポストパンクとハードコアは、次世代で「オルタナティヴ・ロック」に収束し、パンクの精神を継ぎながらも、さらなる音楽的拡がりをみせました。
・アメリカの「AOR」を日本流に解釈して、80年代に国内で流行した「シティポップ」というジャンルは、まるで隔世遺伝のように、2010年代に日本や韓国でリバイバル(再流行)しています。
また、ロックやジャズを含むほとんどの大衆音楽は、「クラシック」と「ブルース」という大きな幹の上に築かれています。
すみません。おそらく今はチンプンカンプンだと思います。しかし、アーティストのルーツ(根っこ)を辿るようにいろんなジャンルを聴くようになってくると、みえてくるものがあります。
ジャンルを軸に音楽の壮大なルーツを辿っていくと、まるで「音楽」という巨大樹の姿がみえてくるのです。
音楽を聴いて、気持ちよくノレる・共感できるというのも、もちろん大切な要素ですが、サウンドや音楽の背景から、ジャンルどうしの繋がりが浮かび上がる瞬間のワクワクが、音楽を聴くうえでの最大の楽しみのひとつなのです。
役に立たないが故に素晴らしいものが世の中はあるのです。
↑日本語ロック孤高の存在、ゆらゆら帝国。ラストアルバムの最後を飾る一曲です。
絹のようにソフトなグルーヴと、「虚無感」を誘うパーカッションは、R&B/ブラックコンテンポラリーの大御所マーヴィン・ゲイの名作「What's Goin On」からの直接的な影響を感じさせます。
「意味を求めて無意味なものがない」という印象的なフレーズは、コミュ力ばかり求められる現代社会への、さり気ないカウンターパンチです(泣)
- アーティスト: ゆらゆら帝国
- 出版社/メーカー: Sony Music Associated Records Inc.
- 発売日: 2014/04/01
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
「ロック」と「フォーク」の違いを検証してみた。
今回はフォークミュージックと対比して、「ロックの聴き方」を学んでいきます。
正しい「ロック」の聴き方
ボブ・ディランの熱狂的ファンであったはずの人々は、「ロック」に転向したディランを受け入れられませんでした。
その理由は、彼らが「ロック」の「良さがわからなかった」=「聴き方がわからなかった」からでした。
今回は、フォークリスナーがなぜ「ロック」の良さがわからなかったのかを探ります。
「フォーク」と「ロック」という2大ジャンルを対比して、正しい「ロック」の聴き方というものを浮き彫りにしていきます。
「正しいロック」なんて言葉は矛盾してる!
ロックとは自由な音楽だ!
「正しい」なんて表現は、ロックに必要ねえ!ファ●ク!!
「正しいロック」という言葉は、確かに「ジャイアントコーンミニ」とか「白いブラックサンダー」みたいな、矛盾したものを感じますよね汗
「精神性としてのロック」はひとまず置いといて、今回は「音楽としてのロックサウンド」というものを分析したいと思います。
どうか気長にお付き合いくださいませ。
さて、前置きはこの辺にしておきましょう。
「フォーク」と「ロック」には、大きく分けて3つの音楽的な違いがあります。
ひとつずつ解説してきましょう。
①「音量」の違い
ひとつめは、ロックの大音量サウンドに、フォークリスナーが慣れていなかったことです。
フォークミュージシャンは、アコースティックギターさえあれば、いつでもどこでも音楽を奏でることができますよね。
それに対して、ロックにおけるエレキギターやエレキベースは、電気増幅を前提として作られています。
つまり楽器本体だけでは、ちゃんとした音が鳴りません。
アンプ(スピーカー)と直接つなげてはじめて音が出力されます。
コンセントをささないと機能しない「家電」みたいなものです。
そして、つないだアンプのボリュームを調整することで、屋外でも響き渡る大きな音量を出力できます。
単純なようですが、この「大音量のサウンド」がロックならではの迫力ある演奏を生み出しています。
ロックバンドのライブにおける、「爆音のシャワー」を浴びるような感覚は、めちゃくちゃ気持ちいいですよね。
ロックミュージックの替えがたい魅力です。
しかし残念ながら、ロックの大音量に慣れていないフォークリスナーにとっては、ロックサウンドは単に「うるさい」「耳障り」な音楽に聴こえてしまうのです。。
②リズムの違い
ロックはバンド演奏なので、メンバーの誰かが軸になってリズムを主導(リズムキープと言います)しなければ、各自のテンポがバラバラになってしまいます。
一方フォーク音楽は、基本的に「独奏(ソロ演奏)」なので、一定のリズムをキープする必要がありません。
例えば、途中で3秒くらい急に演奏をとめるのも、急に倍のテンポで演奏するのも、奏者の自由というわけです。
実はここに、ロックにはない、フォーク最大の魅力があります。
リズムキープの必要性がないことで、奏者の呼吸に合わせた、自由度の高い、ゆらぎのあるリズムを生み出すことができるのです。
↑小節によってテンポを変えたり、歌の盛り上がりに合わせて、ギターのニュアンスを変えているのがわかると思います。
歌い手の心のヒダに触れるような演奏、フォークミュージック最大の魅力の一つです。
最近ネットで話題の高校生シンガーソングライター崎山蒼志くんなんかもこのフォークの魅力を体現しています。
それに対してロックバンドでは、先程述べたように、各プレイヤーのテンポを合わせるため、リズムキープが必要となってきます。
この役割は、基本的にはドラムの「ハイハット」が担うことが多いです。
「チッチッチ」と控えめに、一定のリズムで鳴っているシンバルの音です。
このリズムキープ役がいないとバンドのリズムはめちゃくちゃになってしまいます。
↑「串刺しのUFO」みたいなやつがハイハットです。右足で操作します。
ですが、リズムの自由度が高いフォークを主食とするリスナーからすると、ロックの演奏は、リズムキープによって、機械のように硬直した、面白みのないリズムというマイナスの印象を与えてしまうのです。
しかし一方で、ロックならではのリズムというのがあります。
それは「スネアドラム」の叩きだすリズムです。
一般的な4拍子のロックドラムは「ドッタンドドタン」というリズムですが、「タン」の音(2拍目と4拍目)がスネアの音です。
The White Stripes - 'Seven Nation Army'
↑ホワイト・ストライプスは、ギターボーカルとドラマーのみの変則的な編成のバンド(デュオ)です。
ドラマーは決してテクニカルではないし、むしろ拙い感じがしますが、まるでロックの権化のようなドラムだと個人的には思います。
スネアの動きに注目してみましょう。
最初は「ドッドッドッド」というバスドラムの低音に合わせる形で、スネアは控えめに刻まれていますが、00:37あたりでスネアが2拍目と4拍目に分離し、ロックの基本ビートを叩きはじめます。
そして0:50あたり、ジャック・ホワイトの必殺ギターリフが炸裂するタイミングで、スネアもパワフルな叩き方に切り替わっているのがわかると思います。まさに「ロック!」という感じがしますよね。
ロックでは、このスネアドラムの一打が、バンド全体をぐいぐい牽引していくような感覚(=グルーヴ感)を生みだしているのです。
そういえば昔読んだ本で、ロックとはスネアのリズムであり、ロックとは要するに、勃●した●●であると断言されてました…笑
後半の真偽はさておき、スネアの音は、ロック特有の「ガッツ」のあるグルーヴを生み出すのには欠かせないことは間違いありません。
フォークリスナーはこのロック特有のリズムの「良さがわからなかった」わけです。
③楽器編成の違い
また、ロックとフォークでは、使用される楽器とその数が大きく異なります。
念のため確認すると、フォークは「アコースティックギター」と「ボーカル」をひとりで兼任する、いわゆる弾き語りスタイルが一般的です。
一方ロックは「バンド編成」です。
先ほどのホワイト・ストライプスなんかはかなり特殊なタイプですが、基本的には、ボーカル /エレキギター /エレキベース /ドラムスという組み合わせがメジャーですよね。
そもそもフォークリスナーは、単純にロック楽器に親しんでいなかったせいで、ロックのサウンドを受け入れられなかった、というのはあると思います。
私たちにとって、尺八やシタールの音が、良く言えば「エキゾチック」、悪く言えば「異物感たっぷり」に聴こえるのと同じ感覚です。
しかし、ソロ演奏と複数人のバンド演奏の間には、もっと重要な差異があります。
ロックアンサンブルの魅力
複数の楽器が合わさって音楽を奏でるときに、生まれる重要な要素があります。
Q:ひとりの時には聴こえなくて、人数が増えてくると聴こえてくるもの、な~んだ??
A:答えは、楽器同士の「アンサンブル」です。
「アンサンブル」とは、もともとはクラシック音楽(室内楽)での合奏を指す言葉ですが、ロックやポップスではあまり使われません。
その重要度があまり認知されていないからです。
「メロディーが優れてる」
「緻密なハーモニー」
「ノリのいいリズム」
なんかはよく使われますが、「アンサンブル」について言及されることは少ないように思います。
アンサンブルとは、プレイヤー各人が、好き勝手に気が向くままに演奏するのではなく、互いに触発しつつも調和を生むようなプレイをすることです。
実はロック・ジャズ等バンド音楽では、大なり小なり必ず求められる要素です。
ちなみに、ジャズ畑では「インタープレイ」と呼ばれます。
アンサンブルについては、腰を据えて語ると、それだけで3000字を超えるので、後日あらためて単独記事にします。
↑OGRE YOU ASSHOLEは和製「USインディーロック」バンド。
イントロから、2本のギターと、ベース、ドラムスがそれぞれ独自の動きをしています。
各人が好き勝手に動き回っているようで、非常に調和のとれたコンパクトな演奏になっています。
曲が進むにつれて、それぞれの楽器が裏に回ったり、表に出てきたり、多彩なアンサンブルがギュッとに詰め込まれた一曲です。
雰囲気ぐらいは掴んでいただけたでしょうか?
この「アンサンブル」は、ソロ演奏では決して生まれない音楽的要素です。
フォークなど、ソロ演奏の世界にはない要素で、フォークリスナーはこの「アンサンブル」を楽しむ耳を持っていなかったことが、ロックの良さを理解できなかった最後の要因です。
価値の転換
以上3つの要因により、フォークリスナーである、ディランのファンには残念ながら、ロックの良さはわかりませんでした。
それでは、彼らがロックを楽しむためにはどうすればよかったのでしょうか?
それは、価値を転換することです。
つまり、フォークにとってのマイナス要素こそは、ロックの特徴であり、魅力になっていることを理解しよう、ということです。
・音量が大きくて耳障り
⇒ 大音量の音楽を全身で浴びるような感覚を知る
・(フォークに比べて)リズムが機械的
⇒ ロック特有の「ガッツのある」リズム感覚を掴む
・ロック楽器に親しみがない
⇒ロックアンサンブルの魅力を体感する
以上が、フォークリスナーの、ロックの「正しい聴き方」であり、今回の記事の結論となります。
しかし、これはロックに限った話ではない、ということを覚えておいて下さい。
つまり、あるジャンルでのマイナス要素は、他のジャンルでは「価値あるもの」としてみなされることは往々にしてあるということです。
聴き慣れないジャンルの音楽を聴いて、
「自分にとってはイマイチだなあ・・・」
と少し逃げ腰になってしまったら、
この音楽のどういうところがマイナスに感じたのか
を探り、
そのマイナス要素こそは実はそのジャンルの特徴であり、魅力なんじゃないか?
と一度考えてみることが、そのジャンルの良さを発見する近道です。
そうすることで、あなたの楽しめる音楽の幅はもっと広がっていくのです!
- アーティスト: ザ・ホワイト・ストライプス
- 出版社/メーカー: V2レコーズジャパン/コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2003/03/19
- メディア: CD
- 購入: 1人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (73件) を見る
- アーティスト: OGRE YOU ASSHOLE
- 出版社/メーカー: OYA/UK PROJECT
- 発売日: 2007/10/03
- メディア: CD
- 購入: 7人 クリック: 61回
- この商品を含むブログ (97件) を見る