崎山蒼志(15)の「得体の知れなさ」について、徹底的に分析してみた。
早耳の皆さんはすでにご存じのことでしょう。
邦楽界の超新星、天才シンガーソングライター崎山蒼志(さきやまそうし)。
今回は、最新のリリース情報を交えて、崎山蒼志くんの音楽性をアツく語り尽くしたいと思います。
成熟した邦楽シーン
さて突然ですが、近年の邦楽アーティストって、ほんとうに洗練されてきてますよね。
こなれたアレンジ、高い演奏技術、
優れたメロディーもやすやすと繰り出す「優等生」ばかりです。
星野源なんかはその代表格でしょう。
また、一昔前までは、洋楽リスナーから、日本のバンドは洋楽に比べて「グルーヴ感がない」「もっさりしてる」から聴けたモンじゃないとさんざん言われてました。。
今では「は?オマエSuchmos聴いたことないの?」で一発KOです。
Suchmos - STAY TUNE [Official Music Video]
巷にこれだけレベルの高い音楽が溢れているということは、音楽好きにとっては、紛れもないパラダイスなのですが、ひとつ心に満たされないものがあります。
それは、いうなれば「未知との遭遇」です。
ルーツのみえる音楽
宇宙人のつくる音楽、たしかに一度は聴いてみたいですよね。
とはいえ、人間には聴こえない周波数で作られてるのかもしれませんが。。
…なんて冗談はさておき、優等生バンドや良質な音楽だけでは満たされないのは、「未知との遭遇」つまり、「得体のしれない音楽」と出遭いたい!という欲求です。
世の中のほとんどの音楽は、既存のジャンルやアーティストの影響が垣間見える、つまり「ルーツのみえる」音楽です。
サカナクションを聴いて、「あ、この曲のアレンジはレディオヘッドを意識してるな」とか、
ゲスの極み乙女。のギタープレイは時々やけにYESのスティーヴ・ハウっぽいなとか、
アーティストの「ルーツがみえる」ことは音楽を聴く最大の楽しみのひとつなのですが、あえて意地悪な言い方をすると、「ルーツのみえる音楽」というのは「焼き直しの音楽」とも言えます。
「そんなこと言っちゃうと、世界中の音楽ぜんぶがそうなんじゃないの?」
たしかにそうなんです。
現代のあらゆる音楽は、既存の音楽やカルチャーに影響を受けています。
コード進行やメロディーは、クラシックの300年と、ポップミュージックの数十年の歴史の中で出し尽くされた、みたいなことはよく言われますが、
「え、音楽ってもう出尽くしちゃったの?」
なんて、少し寂しくなることがあります。
得体の知れない音楽に出会いたい!
現代の音楽シーンは、フルーツに例えると、いい具合に熟した良質な「ブランドもの」が出揃っていて、どれも間違いなく美味いんだけど、バナナもりんごもキウイフルーツも、どれも知ってる味なんだよなーという感じです。
そうなると、ドリアンやスターフルーツみたいな、果たして美味しいのか、どうやって皮をむくのか、そもそも食べられるのかすらもわからないけど、得体のしれないワクワク感の詰まったフルーツを切望してしまうわけです。
クドい前置きになってしまいましたが、その
「得体のしれないワクワク感の詰まったフルーツ」
が、まさに今回紹介する「崎山蒼志」くん、というわけです。
さて、だいぶハードルを上げてしまいました。
崎山蒼志(さきやまそうし)くんは、現在高校一年生で、静岡県在住のシンガーソングライターです。
バナナマン日村の出演するネット番組への登場で、突如SNSやネット上で話題になりました。
ご存じでない方、ウワサでは聞いてるけど…という方は、まず番組出演時の動画をご覧ください。(演奏は03:01~)
どうですか?すごいでしょう!?
得体が知れないでしょう!?
ある日、YouTubeのおすすめ動画に出てきたので、何気なしに視聴したのがキッカケで出会いました。
こういうTV番組って、子供なのにボーカルの声量がすごいとか、子供のわりにとてつもないギター速弾きができる、とか「子供のわりに」よくやってるね、というカッコ付きで賞賛されることが多いですが、、
すみません、ガチのやつでした。
一体何がスゴい?
何をもってガチなのかというと、「音楽」としての完成度の高さです。
「ギターこんなに速弾きできるよ」とか「こんなに早くツーバス踏めるよ」とかは、音楽ではなく、単なる曲芸です。
それを鍛錬して習得することと、芸として見栄えがすることは、尊敬に値しますが、それは音楽としての充実度、完成度とは無関係です。
対して、崎山蒼志くんのギターは確実に音楽性の充実につながるプレイをしています。
決して彼のギターは下手ではありません。
というか死ぬほどうまいです。
メロウだったり、パーカッシヴだったり、緩急自在で、音の粒立ちも良く、性急なのに抜群の安定感があります。
それでも彼はテクニックに走りません。
技術や本能に任せてギターを「暴れさせる」のではなく、音楽に追従させて「飼い慣らしている」ところに、彼の「音楽家」としての素質が垣間みえます。
早くも確立された歌唱法
ギタープレイも十分すごい崎山蒼志くんですが、歌の方も、とんでもなく素晴らしいです。
こちらもギターと同じくテクニック主義ではありませんが、驚くべきことは、すでに「崎山蒼志の歌唱法」が完全に確立されていることです。
まず、大抵のボーカリストはモノマネから入ります。
そこから自分の歌唱法を徐々に確立していきます。
レディオヘッドのトム・ヨークは、今でこそ唯一無二の歌唱法を持っており、真似するアーティストも多いですが、初期はU2のボノ風だったり、セックス・ピストルズのジョニー・ロットン風だったりしていました。
フジファブリックの故・志村正彦も初期は、覇気のないウルフルズのトータス松本みたいな歌い方をしていました。(01:42~のサビの歌い方)
そんな中、若干15歳で、誰にも似ていない、独自の歌唱法を身につけているっていうは本当にありえないです。
「う」とか「お」の発音が独特だったり、
あえて歌メロの流れを止めるような「堅い」発音をしたり、震えるような発声をはさんだり・・・
素人なのでうまく言語化できませんが、素人目でもその独特の歌唱法には耳を奪われます。
他にも風変りなコード進行、歌詞の言葉選びなど、ネット上ではさんざん話題になっていますが、ちょっと字数が多くなってきたので残念ながら割愛します。。
崎山蒼志くんのルーツ分析!
そんな優れた才能をもつ崎山蒼志くんを単独記事で紹介したいと思ったのは、やっぱり彼が「得体が知れない」音楽を奏でているからです。
幼い頃に母親の聴くヴィジュアル系ロックバンドの影響で音楽をはじめたそうですが、退廃的で耽美な歌詞世界はその辺からの影響を感じさせます。
Plastic Tree有村竜太朗の書く文学少年的な詩に少し似てるかもしれません。
鋭くも崩れそうな不安定な歌メロは、初期の七尾旅人や凛として時雨のTKなんかに似ているかも。
また、曲から溢れる思春期特有の焦燥感は、フジファブリックの「陽炎」もしくはNUMBER GIRLの「透明少女」を連想させます。
「日村がゆく」で話題になった「五月雨」という曲は特にですが、ギタープレイがとてもパーカッシヴです。
哀愁漂うコード進行と重なると、フラメンコギターの雰囲気があります。
ちなみに幼い頃はクラシックギターを習っていたんだとか。
やっぱり得体が知れない!
スミマセン、いろいろ並べ立ててみましたが、どれも似て非なるものだと思います。。
完敗です。
崎山くんの音楽が、既存のルーツミュージックの「焼き直し」ではない、突然変異的な音楽であるということはお判りいただけたかと思います!(負け惜しみ)
音源リリース!
実は、急ごしらえでこんな記事を作ったのには訳があります。
それは、あさって7月18日(水)に初のレコーディング音源「夏至/五月雨」がリリースされることが決まったからです!※
おめでとうございます!
※楽曲分析はこちら
「日村がゆく」でバズってから、たった2か月で音源リリース、更にはコヤブソニックなど、大型フェスへの出演も続々と決まっています。
近頃の市場スピードはほんと早いですね。
ポストフォークの起点となるか?
「フォークvsロック」の章でも述べましたが、フォークというジャンルの最大の魅力は、ソロ演奏ならではの、ゆらぎのあるリズムと、アーティストの人柄をそのまま音楽にしたような親密さにあります。
この利点を最大限に利用した崎山くんは、フォークミュージックの限界をブチ破りかねない存在だと思います。
崎山くんや、彼に触発された若者たちが、新世代のフォークミュージック、いわば「ポスト・フォーク」の潮流を創り出す日も近いかもしれません…!
星野源に次いで、日本の邦楽シーンを塗り替えてくれることを期待しています。
とはいえ、彼はまだ高校生になったばかりなので、学業や普通の高校生としての生活を第一にして、良い大人たちに見守られながら、今のところはマイペースで音楽活動を続けていただきたいです。
終始冷静さを欠いた解説で申し訳ありませんでしたが、私の、崎山蒼志くんへの愛と期待感だけは伝わったかと思います笑
以上、若き才能の紹介でした!