「グルーヴ」は三度の飯より旨し。シティポップからはじめるブラックミュージック入門
Suchmosを筆頭に、cero、D.A.N、Yogee New Wavesと、最近の邦楽シーンのメインストリームになりつつある、シティポップ。
バンドだけでなく、iriや佐藤千亜妃(きのこ帝国)などの「ボーカルもの」も見逃せません。
都会的な雰囲気を持ちながらも、アーティストごとに、多種多様の持ち味があるシティポップ勢。
共通点は、ブラックミュージックのエッセンスを意識的に取り入れているということです。
ということで今回は、ブラックミュージックの楽しみ方について、レクチャーしていきたいと思います。
ブラックミュージックとは
ブラックミュージックとは文字通り、黒人のつくり出した音楽の総称です。
具体的な音楽ジャンルでいえば、ジャズ・ファンク・R&B・HIP HOP等にあたります。
そして、ブラックミュージックとは主に、「グルーヴ」感の強い音楽のことを指します。
グルーヴって何?
ブラックミュージックにとって、「グルーヴ」という概念は欠かせないものです。
「グルーヴ」を敢えて一言で表すなら、
リズムの「ズレ」や「強弱」が生み出す「一定の効果」
となります。
…かなり慎重に言葉を選んでしまったので、全然ピンとこないですよね笑
何故慎重になってしまったのかというと、グルーヴという概念は、ブラックミュージックにとって、最も重要な要素であるにもかかわらず、ハッキリした定義がなされていないからです。
しかし、これはよく考えてみれば、別段おかしなことではありません。
だって、私たち人間の「魂」や「脳の働き」なんて、ほとんど解明されてないですよね?
飛行機の飛び方だって、実はあんまりよくわかってないそうですし、世の中わからないことだらけなんです。
なんでもかんでも誰かが「答え」を用意してくれる、グーグル先生が教えてくれると思うのがそもそも間違いなんです!
…ということで、肝心なところは煙に巻いて、話を先に進めるとしましょう。
グルーヴィーな音楽=身体を揺らしたくなる音楽
「グルーヴ」という概念は感覚的な要素が強いので、「言葉だけで」説明しようとすると、たぶん何万字あっても足りませんし、そもそも私には説明できる能力がありません笑
しかし、グルーヴ感の強い音楽を聴くと、私たちはどういう反応するのかは簡単に説明できます。
グルーヴの強い音楽を聴くと、自然と身体を揺らしたくなります。
もっと具体的に言うと、身体が勝手に踊りだしたくなるのです。
思わず踊りたくなるような音楽を指して、グルーヴのある(グルーヴィーな)音楽とよく表現しますよね。
グルーヴを生み出しているもの
グルーヴを生み出しているのは、楽器やボーカルの繰り出すリズムです。
グルーヴを実感するためには、各楽器のグルーヴを体感して、身を預けてみる必要があります。
ということで、Youtube先生に合わせて踊りながら勉強してみましょう!
ハイ、自習!!
①ドラムスのグルーヴ
ドラムはバンドのリズムを主導する楽器です。
ドラマーの実力次第でバンドの空気を一変させるほどの影響力を持っています。
「ポーティスヘッドというイギリスのバンドの曲を叩いてみた」
…ってホンモノより上手いじゃん!
それもそのはず、彼は現代ジャズシーンの雄ロバート・グラスパー・エクスペリメントで叩いていたプロ中のプロ。
ビートが細かすぎて、実際に踊ることはできなさそうです。。
しかし、「身体が思わず反応してしまう」感覚、なんとなくわかりますでしょうか?
②ギターカッティングのグルーヴ
ギターには、カッティングという奏法があります。
チャキチャキカッチャカッチャというような音を鳴らします。
わざと音をミュートして、鋭いリズム感を作り出しています。
Daft Punk - Get Lucky (Official Audio) ft. Pharrell Williams, Nile Rodgers
デスクトップミュージックを生業としていたダフト・パンクが、生のバンドサウンドで再び成功を掴みました。
Chic(シック)のギタリスト、ナイル・ロジャースを迎え、名人的カッティング芸を惜しげもなく披露しています。
一部の隙も無い、ラグジュアリーで完璧なポップソングに仕上がっています。
ベースのグルーヴ
ベースにも、ギターと同じくリズムを強調するための奏法があります。「スラップ」です。
ピックの替わりに唐辛子を用います。ウソです。
Bruno Mars - Treasure [Official Music Video]
サウンドも、MVの演出も、アース,ウインド&ファイヤーなど往年のファンクミュージックを忠実にパロっています。…全員でコッチ見んな!!
スラップの効いたベースが、腰を直接狙い撃ちするような強烈なグルーヴを生み出しています。
ボーカル(ラップ)のグルーヴ
ブラックミュージックでは、ボーカルもリズム楽器としての機能を求められます。
先ほど紹介したDaft PunkのGet Luckyに客演しているファレル・ウィリアムズのボーカルも、バンドサウンドの中で、リズミカルに溶け込んでいます。
しかし、ブラックミュージックにおいて究極のボーカルスタイルといえば、HIP HOPにおける「ラップ」です。
客演したA.Z.のラップパートが、イントロのすぐ後にはじまりますが、のっけから息継ぎなしの最高速で飛ばします。
ただ速いだけではなく、細かく踏んだ韻のリズム、メロディアスな抑揚(フロウ)のつけ方、そして耳なじみのいい声質と、音楽的要素が多く隠れています。
さて、リズムのズレが生み出す「効果」=グルーヴを体感していただけたでしょうか?
あ、グルーヴを体感するには、大前提として「音量を上げる」ことが必須であることをお忘れなく。
グルーヴは黒人音楽の専売特許?
今回はグルーヴを体感することで、ブラックミュージックに慣れ親しんでもらおうという趣旨なので、黒人音楽一辺倒の案内になってしまいましたが、グルーヴとは、ブラックミュージックだけの特権ではありません。
確かに、グルーヴの重要性を、ポピュラー音楽の世界に提示したのはジャズやファンクです。
しかし、例えば、沖縄音楽や、盆踊りや、メトロノームの音にも、実はそれぞれ異なるグルーヴがあります。
あらゆる時代、あらゆる地域の音楽を、「グルーヴ」という角度から覗いてみると、もっとオモシロイものがみえてくるのです…
Kraftwerk - The Robots HQ Audio
今回紹介したブラックミュージックのリズムは、少し後ろにアクセントをズラしたリズム(タメの効いたリズムと表現します)ですが、こちらドイツのクラフトワークは、ご想像の通り、「キカイのリズム」を元にしています。
メトロノームのように「ジャスト」なグルーヴは、思わぬ快感をもたらし、人々をテクノミュージック(とテクノカット)に向かわせたのです…
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