CHAIからはじめる「ポストパンク」入門
「NEOかわいい」
「コンプレックスはアートなり」
を掲げた女性4人組バンド、CHAI。
どうせコンセプト先行の、よくあるコミックバンドなんでしょ?
…と思いきや、彼女たちの作るサウンドは、震え上がるくらい「骨太」なんですよね。
ガールズバンド革命=「CHAI」
最初にYoutubeでみた(聴いた)ときは唖然としました。
「オレ弱いよ~」とか言って予防線はりながら、女子に腕相撲で負けたみたいな、10万ボルトの衝撃が走ったのです。
CHAI - N.E.O. [YouTube Music Sessions]
家庭にも社会にも、いよいよ男の出る幕はなくなりそうですね。。
さて、そんなCHAIは、Spotify世代のバンドらしく、音楽の探し方は「TV」でも「ラジオ」でも「レコードショップ」でもありません。
なんとH&Mで「Shazam*」です。
*Shazamは音声認識で今流れてる音楽を自動で検索するアプリ。
確かにH&Mとか海外のファストファッションのお店って、低音の効いた音楽がガンガン流れてますよね。言われてみればプチ・クラブ空間みたいです。新しい音楽の出会いのカタチなのかも。
CHAIのルーツ探訪
そんな新しい世代のガールズバンド・CHAIのルーツを探っていきたいと思います。
彼女たち、洋楽ポップス~R&B~EDMまで幅広く手当たり次第聴いてるようです。気に入った楽曲やアーティストはバンド内でシェアし合うんだとか。
確かにCHAIの音楽にはブラックミュージックやクラブミュージックの要素もふんだんに盛り込まれています。
しかし、CHAIのサウンドの「根っこ」にあるのは、「ポストパンク」だと個人的には思っています。
ポストパンクとは?
ポストパンクとは、70年代にパンクロックの焼け野原の後にイギリスで生まれた、ロックの一形態です。
音楽性はバンドにより様々ですが、あえて共通点を挙げるなら、「クール」で「トガった」サウンドを奏でるという点でしょうか。
邦楽ポストパンク
邦楽ロックでいえば、最近ではトリプルファイヤーやLillies and Remains、古くはフリクションや突然ダンボールなど。
淡々としたドラムの上に、ギターやベースが単純なリフを刻む、隙間だらけのようでいて隙のないアンサンブル。
Totsuzen Danball [突然段ボール] - 介添人の希望すること (1981)
フレーズを淡々と繰り返すだけの規則正しいドラムプレイは、ポストパンクバンドでよく用いられます。ドイツのNEU!というバンドが生み出した「モータリックサウンド」の影響です。
オリジナルポストパンク
お次は、オリジナルともいえるイギリス70~80年代のポストパンク。「ニューウェーブ」とも言われます。
現在進行形のオルタナティブ・ロックやインディーロックの直接的先祖にあたります。
Joy Division - Transmission [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
キング・オブ・ポストパンクと言えばジョイ・ディヴィジョン。
氷のように鋭利なギターサウンドと、メロディアスなベースライン、ジム・モリソンみたいに低く絞り出すボーカルは、多くのポストパンクバンドがこぞって真似しています。細かくシンバルを刻む手法は、このバンドの発明です。
CHAIのドラマー・ユナも多用していますね。
ポストパンクは先ほどのジョイ・ディヴィジョンのような「ダーク」なサウンドが多いですが、こちらはCHAIに似てポップな雰囲気。
ギターカッティングとベースラインがCOOL!
ただし、00:17頃のハゲの笑顔は今晩あなたの夢に出てきますよ?
いかがでしょうか?
意外と「ダンス」の要素も強く、いわゆる「昔のロック」の中でも、感性が比較的今に近いんじゃないかと思います。
その証拠に、ポストパンクのダンス成分を拡張したようなバンドが、10年ほど前にぽんぽん現れました。俗に言うポストパンク・リバイバルです。
00年代ポストパンク・リバイバル
グルーヴィで、だんだん今っぽくなってきましたね!
現代のバンドにもポストパンクの血が受け継がれてるのがわかると思います。
トロピカルな味付けは、少し「sayonara complex」っぽいかんじです。
H&Mで鳴っててもおかしくないぐらいダンスミュージック寄りですが、骨太なバンドサウンドとダークなメロディーはあくまで「ポストパンク」マナー。
最後のスネア連打も、EDMだったら「キター!」ってなるところで、ピタリと曲が終わるのが最高にカッコイイ。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
CHAIファンの皆様のアンテナに一個でも引っかかれば嬉しいです。
これを機にポストパンクを掘り下げていただけると感無量です。
NISENNENMONDAI - LIVE AT UPSET THE RHYTHM
女の子3人組ですが、もはや「邦楽ロック」「ガールズバンド」と呼べないぐらいストイックなサウンドです。。「話しかけるな」オーラが半端ない。
皆さんもうお気づきかと思いますが、私、ポストパンクが大好物なんです。
ダークなサウンドはもちろん、ハスに構えた態度や、ライブやアルバムアートワークでも「決して笑顔を見せない」感じが、中二病っぽくてドツボなんです!笑
対して、CHAIはほんとうに笑顔が似合う4人組ですが、クールな音楽性とのギャップがマジで素敵。
あっ…これが「NEOかわいい」ということか。
Unknown Pleasures (Bonus CD) (Reis)
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