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平成ポップミュージックの最高到達点。星野源『POP VIRUS』主観まみれの全曲解説!

 

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 先日発売された星野源のニューアルバム『POP VIRUS』の全曲解説です。

 

2018年は災害が多く、どちらかというと、暗い一年に思えましたが、星野源は、そんな年の瀬に最高にHAPPYでクリエイティブなクリスマスプレゼントを、私たちに届けてくれました!

 

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ニューアルバム『POP VIRUS』、12月19日の発売日に聴いてからずっと、興奮冷めやらぬ状態でした。これじゃあ冷静にレビューできないと思い、初聴から18日経った今、やっと正しく呼吸ができるくらいには落ち着いたつもりです。

 

さて星野源のニューアルバムは本当に皆さん期待されていたことと思います

なにせ3年ぶりのニューアルバム、そしてあの「恋」が収録、その他も巨大タイアップ目白押しですから。国民的待望ですよ!!

 

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だめだ!興奮冷めたと思ってたら、まだ真っ只中でした。

カッチリと冷静に解分析するには、まだまだチルアウト期間が必要かもしれませんが、それでは2019年も終わってしまうので。。

多少熱が入ることを、どうかお許しください。

 

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星野源『POP VIRUS』全曲解説

 

 

【Pop Virus】

 


星野源 - Pop Virus【MV】/ Gen Hoshino - Pop Virus

 

タイトルチューンの「Pop Virus」は、堂々としたオープニングを飾ります。

ふーむ、色気たっぷりですね。(おしりたんてい風)

 

先行でMVが公開されていたので、楽曲については先にこちらでレビューしています。

 

 

nusk.hatenablog.com

 


 

この曲について、ひとつ危惧していたことがあります。

MV冒頭50秒ほどで、花瓶が割れるんですが、花瓶がパリンと割れる「効果音」と、その音の入る「タイミング」が、あまりにも気持ちよくて。

映像ありきということで、もしかするとこの「花瓶の割れる音」はアルバムではオミットされるんではないか?ということが心配でした。

が、ちゃんと収録されてましたね!

初っ端からどうでもいい話ですみません。

 

それはさておき、歌詞に耳を傾けると、音楽への愛をアツく歌っていますが、サウンドやMVを含めたイメージをひっくるめてみると、日本の音楽シーンやリスナーに対して、「オレがJ-POPの歴史を塗り替えてやる!」という決意表明にきこえます。

 

 

 

【恋】


星野源 - 恋【MV & Trailer】/ Gen Hoshino - Koi

 

まず、発売から2年、ようやくアルバムに納められたことにまず安堵感を覚えます。

 

前回の記事でも触れましたが、星野源史上、もっとも有名な楽曲でありながら、サウンドの革新性と、楽曲の完成度もずば抜けて高い。まさに真のポップミュージック。

 

これぞ星野源の代表作と胸を張って言える作品です。

 

…が、あえてケチつけるなら、2年前ということもあって、アルバムから若干浮いてるといえないでもない…かな?

 

けどこの曲をアルバム用にリアレンジっていうのはさすがにできないですよね完璧すぎて(^^)

 

サウンド面では、「モータウンコア」のビートと、中国の弦楽器「二胡の音色が特徴的ですが、もうひとつ特筆したいのが、アウトロになって突然にハジけだすハマオカモトのベース。痺れるー

 

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【Get A Feel】

さて、純粋な新曲として流れるはじめての曲です。オーティス・レディングブッカーT&MG'sを思わせるオールドR&Bの趣のあるゴキゲンな一曲。間違いなくSUN」の系譜ですね。

 


星野源 - SUN【MV & Trailer】/ Gen Hoshino - SUN

 

「恋」や「SUN」のようなアルバムのハイライトにあたる曲ではありませんし、一見なんでもないような小品にみえますが、小気味良いとリズムとメロディー、なによりバンドアンサンブルに一体感があって、噛みごたえのある一曲に仕上がっています。

星野源のように、R&Bを完全に血肉にしているアーティストは日本にどれだけいるでしょうか? 

 

河村カースケのドラムスがいつにもましてアル・ジャクソン。

 


Otis Redding - Love Have Mercy

 

 

 

 

【肌】

 

【Family Song】のカップリングとして収録されていた既発曲。スクエアなスネアドラムに対して、長岡亮介のエレキが、チャキチャキと気持ちよーく歌ってます。

 

この曲にはちょっとした個人的なエピソードがあって、車でこの曲を流すと、ウチの3歳の娘が

「あ、これロボットのハミガキのやつ!」

と叫ぶんです。

なんのこっちゃと思われるでしょうが、実は我が家では「ロボットのハミガキのやつ」といえば、YMOの名盤『BGM』のことなんです。

 


YMO - Ballet HD

 

確かに、このアルバムの冒頭曲「Ballet」と【肌】はドラムスのフィーリングがそっくりなんです!

つまりどういうことかというと、ウチの娘は天才だと言うことです(^^)

 

 


星野源 –「肌」【Studio Live from “POP VIRUS”】 / Gen Hoshino - Hada

↑スタジオライブ映像がUPされてました!みんなかっこいい~!初回盤買っておけばよかった。

 

 

 

 

【Pair Dancer】

音数が多いのにアンビエントで、静かな癒しを感じる曲です。

その静謐さに反して、驚くほど多くの電子音で構成されており、ドラムス不在、ベースはじめ生楽器はかなり控えめ。なのにちっとも機械的にきこえません。

 

電子音であそぶ無邪気さは、星野源の敬愛する細野晴臣のエレクトロニック・プロジェクトSketch Showを思わせますね。

 


Sketch Show - Chronograph

 

この曲が15年前以上前に作られたこと、そして今年72歳になるおじいちゃんがコレを作ったってこと、・・・まことに信じ難し。

 

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【Present】

 

チェロとピアノの低音から物悲しくはじまります。

ドラムスも生音ですが、HIP HOPのドラムループ(音源を繰り返してリズムトラックにする手法)のようなDOPEなプレイ。

 

重苦しさから展開するサビの開放感、そしてなにより間奏におけるサックスが小気味よくって大好き!

ジャズサックス奏者のポール・デスモンドを思わせる爽やかでさりげない音色が最高なんです!

 


That Old Feeling

 

やばい、まだ前半なのに熱が入りすぎてる。チルアウトチルアウト…

 

 

 

【Dead Leaf

 

山下達郎のコーラスアレンジが秀逸です。

コーラスを山下達郎に依頼して、しかも贅沢に一曲だけ部分使いしてしまうアーティストって、星野源以外にはいないでしょう。洗練されたモダン・ドゥーワップをご堪能あれ。

 

欲を言えば、ちょっとコーラスが控えめな気がして寂しいです。ON THE STREET CORNERシリーズの、あの音の渦のようなコーラスに埋れたかった。。

 


Tatsuro Yamashita - 01 - You Belong to Me(Bob Dylan)[On The Street Corner I][1986]

 

抑制されたタイトなドラムも印象的ですね。

前作でいうと、「Snow Men」のあの感じ。

そう、ディアンジェロバンドのクエストラヴ風ですね。

リズムを崩すフィルインもスタイリッシュで、アクセントになっています。

 

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むむ?というかこの曲のオマージュでは?リズムセクションの演奏がそのまんまですやん。。

 

ドラマーはおなじみ河村カースケではなく、玉田豊夢というセッションドラマーです。

 

河村カースケに比べてヤンチャなノリで、ビシッとイメージにハマってますよね。

曲にピッタリのミュージシャンを起用する、星野源の選択眼はほんとすごいです。

 

この玉田富夢はこの後の【サピエンス】でも最高の仕事をしてくれるんです。こうご期待!

 

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【KIDS】

 

またもや【Family Song】収録曲です。思えば、FSのシングルから3曲もアルバムに収録されてますね。

この曲は、星野源が、サンプラーとギター1本でゆるりと演奏しています。いわゆる宅録というやつです。

 

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※写真はイメージ

 

サビのメロディーと、ギターチューニング風の間奏が素敵な曲なのですが、少し残念に思うところがあります。。

というのは、ほとんど宅録のままアルバムに収録されてしまったからです。

 

どうせならバンドサウンドやストリングス、もしくは電子サウンドで大胆にアレンジし直してほしかったというのが本音です。

 

群雄割拠の『POP VIRUS』の楽曲の中ではちょっと「弱い」かな、、というのが現時点の印象です。

 

 

 

【Continues】

 

こちらは「恋」のカップリング。ツアータイトルにするほど星野源本人の思い入れの強い曲です。

 

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ゆっくりと前進していくような力強さを感じます。これはアルバムに収録して大正解だと思います。何様!

 

 

 

【サピエンス】

 

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今回の新曲のなかで、最も挑戦的な曲ではないでしょうか?

まずは先の【Dead Leaf】でも登場した玉田豊夢のドラムです。

 

え?ドラム?打ち込みじゃないのかって?確かにSTUTSのMPCもリズムを刻んでますが、メインを張ってるのは生のドラムです。

 

超高速で正確無比に刻まれる32ビート(ですかね?)は、スクエアプッシャーサンダーキャットを彷彿させます。人力ドラムンベースです!

 

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そして第2は、snail's houseというDTMミュージシャンの参加。恥ずかしながら、彼の存在は今回この【サピエンス】ではじめて知りました。

 

こちらの記事で勉強させて頂きました。ご紹介ありがとうございます!

 

goodbyschema.hatenablog.com

 

 

Sneil's Houseは若干21歳にして、、kawaii future bassという、新しい音楽ジャンルの第一人者だとか。

ネットで海外のリスナーから見出されて、星野源自身も、ネット徘徊中にたまたま楽曲を視聴して、ガツンときてオファーしたそうです。夢のある話ですねー。

崎山蒼志くんと同様、次世代を担うアーティストです。

 

nusk.hatenablog.com

 

具体的にSneil's Houseは何に参加してるのかというと、ところどころに挟まれるシンセベースサウンドの制作です。

生演奏ではなく、コンピュータで作り出した「打ち込みサウンド」のはずなんですが、リズムや音色選びが、驚くほど肉体的です。

 

特にラストの畳み掛けは、ジャズの即興演奏を聴いてるような熱量を感じました。さきほどのサンダーキャットのベースプレイ、または、ジョン・コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドに見紛うようで、ちょっとビビります。。

 

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さて、今回snail's houseくんは楽曲の制作には携わっていません。作曲と編曲は星野源ですからね。あくまで電子音で彩りを加えただけ。

しかし、【サピエンス】のアレンジは明らかにsnail's houseの諸作品からインスピレーションを得てるのは間違いないでしょう。

 

干支一回り以上も年下の人間からも、吸収できるほど視野の広い星野源もすごいですが、現代のトップアーティストに影響を与える18歳おそるべし!

今回のようなフィーチャリング参加含め、snail's houseのこれからの活躍に期待大です!

 

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【アイデア

 

ご存知、このアルバム『POP VIRUS』の方向性を決定づけた楽曲です。サピエンスからの繋ぎ、毎回鳥肌立ちますよね。

 

J-POPのど真ん中で、こんな自由に冒険ができるんだ という、これからのJ-POPの在り方を指し示す名曲です。 

 


星野源 - アイデア【Music Video】/ Gen Hoshino - IDEA

 

nusk.hatenablog.com

 

音楽って、「明るい曲」「暗い曲」なんてなんとなく分類したりしますが、この『POP VIRUS』の楽曲は、一曲の中に陰と陽の往来があるような曲が非常に多い気がします。中でもこの【アイデア】は白眉。

これが朝ドラの主題歌って、改めて思うとすごいですよね。

 

 

 

【Family Song】

 

オールドファッションドなソウルミュージックを丁寧に日本語ポップに落とし込んでいます。

「おげんさん」のキャラクターは、紅白歌合戦にも登場して、お茶の間にも知れ渡りましたね笑

 


星野源 - Family Song【MV & Trailer】/ Gen Hoshino - Family Song

 

「きゅーきゅーしゃのー(救急車の)」

「ゆーがーたのー(夕方の)」

「がーいとーのー(街灯の)」

という「音節の少ない言葉選び」は、ソウルっぽい気持ち良い節回しをするために意識的にやってるんだなーと再発見

音楽を作るうえで、歌詞に力を入れるというのは、なんか上手いこと言う」んじゃなくて、「メロディーとして、リズムとして、どう聴こえるかを真剣に考える」ことなんだぜ?

と私たちに自信たっぷりに提示してくれています。

 

 

 

【Nothing】

 

夜の雨に打たれるようなSTUTSのビートと、胸を締め付けるような悲哀なメロディーライン。

ベイビーフェイスエリック・ベネイ、最初期のエグザイルなんかを思わせるネオソウル風味の楽曲です。

 

youtu.be

 

 

 

【Hello Song】

いつのまにかラストソングです。

「なにもないな」という【Nothing】の地点から、「いくつもの骸をこえて」また新たに始めようという、全曲からの流れが最高にドラマチック!【恋】と同時期にできた楽曲ですが、ぜひアルバムの中で聴いていただきたいです。

 

まぶしすぎるくらい突き抜けた明るさですが、けっして虚勢ではなく、まさにいくつもの骸をこえてもまた蘇る、ポップ・ウイルスのすさまじい生命力をびりびり感じる曲です。完璧な大円団。

 

 

 

 

 

総評

 

さて、いかがでしたでしょうか。なにせ思い入れが半端ないので、うまくレビューできてるかどうかはわかりません笑

 

星野源のニューアルバム、どうだった?」と訊かれたら。

 

一言でいうと、濃厚でありながらも、口当たりがまろやか

職人的こだわりと、サービス精神が同居した、期待通りに期待以上の素晴らしいポップアルバム!

 

と自信たっぷりに答えたいです。自分の作ったアルバムではないですが笑

 

J-POPが「ポップ」であることって、当たり前のような気もしますが、日本の音楽シーンにおいて、ポップアルバムと言い切れる作品は数少ないと思います。

 

辛口にいえば、多くは、出来上がった曲を単に寄せ集めたバラエティパック、もしくはロックやR&Bの名を借りてポップであることを軽視したオ○ニーアルバムです。

 

そんな中、星野源はこれからのポップアルバム、ポップミュージックのあるべき姿を提示してくれました。

星野源は、『POP VIRUS』をもって、J-POPを芯から生まれ変わらせました。

 

半年前の予言はやはり当たっていましたね!ほらね!(むりやり)

 

nusk.hatenablog.com

 

 

 

 

 

ついに6000字をこえてしまいました。。

アルバム1枚に6000字語れる熱量に、自分でも関心しますが、 それよりも、それだけ語る余地があるほど、このアルバムのやアレンジの作り込み、作り手の思い入れが半端ないんです。

 

 

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